(民法学習1)

使者・代理人・委任とは

☆ 使者

使者(ししゃ)」とは、代理人と異なり、意思決定の自由がありません。この使者には、あなた以外の者であなたの完成した意思表示をそのまま伝達する「伝達機関としての使者」と、あなたの決定した意思を表示して、その意思表示を完成させる⇒口上を伝える伝令のような「表示機関としての使者」があります。

 

したがって、使者は道具のようなものです。例えば、あなたが何か意思決定をして、電話でそのことを相手に伝えたとします。この場合、あなたは肉声ではなく、電話線を通じて電波で相手に伝えたわけですが、この電波の役割をした人間⇒これが「使者」です。

 

☆代理人

代理人」とは、あなたに代わって意思決定をし、代理行為をする者のことです。あなたの信任を受けた者を「任意代理人」、法律の規定による者(親権者や成年被後見人など)を「法定代理人」といいます。

 

したがって、代理権の範囲も、「任意代理人」は、あなたとの定めた範囲もしくは財産の現状維持などの保存行為などで、一方、「法定代理人」は、親権者や後見の代理権など各法律で定められています。なお、「代理人」は、法律で要件が定められています。

 

 <代理の要件と効果>

    (要件)

       ①あなたが代理人に代理権を与えること(代理権授与)

 

       ②代理人があなたのためにすることを示すこと(顕名=けんめい)

 

       ③代理人とあなたの相手方の間に有効な代理行為があること

 

   (効果)

      あなたとあなたの相手方の間に直接に法律効果が生じます。(代理人とあなたの相手方の

      間には法律関係が生ずるのではありません。)

 

☆委任

委任(委任契約)」とは、ある事務の処理をあなたが他人に任せること⇒「法律行為をすることを委託する契約」⇒をいいます。この委任したことを記した書面が「委任状」です。、なお、「任意代理人」に、あなたが代理権を与えるためには、この「委任契約」が必要となります。

 

「一般的な委任状(委任契約)」書式例

委 任 状

 

委任される者

        住所

        氏名

 

    私は、上記の者に下記の権限を委任します。

 

 

     委任事項

       1.

       2.

       3.上記各号に関する一切の事項

 

                 平成□□□□□□

                 委任する者

                   住所

                   氏名        印

 

               ※作成年月日

               ※有効期限

 

(作成上の注意点)

・委任状とはある人に一定の事項を委託した旨を記載した文書のことですので、法律的に

 は代理権を与えたことの証拠にもなります。

 したがって、記入事項としては、最低限、委任する者、委任される者、委任事項が必要

 ということになります。

 なお、白紙委任状とはこの委任事項など委任状の一部を空欄にしたものを言います。

 

・受任者(代理人)がこの空欄を利用して権限濫用した場合であっても、法的には表見代

 理といって代理行為は有効となることがありますので、委任状を作成するときは委任事

 項などはできる限り明確にしておきましょう。

 また、文言が曖昧では白紙委任状と大差ありません。

 なお、委任状を濫用されないために、委任状の作成日付や有効期限なども明記しておき

 ましょう。

 

・押印の印鑑は、委任内容に応じて認印か実印を使用します。

 実印を使用する場合は印鑑証明書を添付します。