◇ 農地転用許可申請等
(3)申請に係る農地を農地転用する行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていない場合。(同3号)
これには、次のケースが想定されます。
①土地登記簿謄本の乙欄に権利者がいる場合で、多いのが財務省と金融機
関です。
相続税納税猶予を受けているために財務省の抵当権が設定されたり、農
協から借り入れをして抵当権が設定されたりする場合などです。
②農地の貸し借りです。
これは農業経営基盤強化促進法による利用権設定(農地の貸し借り)が
されている場合です。
また、農地法第3条による使用貸借権や賃貸借権が設定されている場合
もあります。
これらが設定されているかどうかは農業委員会に確認しましょう。農業経営
基盤強化促進法による利用権設定の解除は簡単にできます。詳しくは市町村
農政課または農業委員会に問い合わせましょう。
農地法第3条による使用貸借権や賃貸借権が設定されている場合は、農業者
経営委譲年金を受給するために親子間で使用貸借権が設定されている場合が
あります。
この場合は農地法第20条による合意解約が簡単にできます。
難しいのは、第三者に農地法第3条の使用貸借権や賃貸借権が設定されてい
る場合です。
親の代から続いているケースが多く、合意解約するのに離作料を請求された
り解約を拒否されたりする場合があります。
これらの権利が設定されている場合は、その権利を解約するか、その権利者
に「農地転用することを同意する」という書面が必要になります。
(4)申請に係る農地を申請に係る用途に供することが確実と認められない場合。(同3号、農地法施行規則第5条の十六)
例えば、譲受人が住宅を建てる申請である場合、都市計画法では家が建てられな
い要件の譲受人であったり、場所であったりする場合は、農地転用が間違って受
け付けられても、家が建つ見込みがないということで、その目的が達成できない
ことです。
また、よくあるケースで、家を建てる計画が具体化していないのに、とりあえず
農地転用だけしておくといった場合もこれに該当します。
これらは、転用しても開発の見込みがないため、農地転用の許可を出しても申請
に係る用途に供することが確実ではないため許可になりません。
(5)周辺農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合。
(同4号)
これは、農地転用されたために付近の農地や用水に、重大な支障を及ぼす可能性
があることが予想される場合に適用されます。
例えば、まわりが田んぼでそこに自動車修理工場を建てる申請である場合は、自
動車の油が雨などで周辺の田んぼに流れ込む恐れがあるため、許可にならない可
能性があということです。
また、高い建物などができることによって、日照時間が極端になくなる場合など
も考えられます。
(6)一時的な利用に供するために農地を転用しようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが認められない場合。(同6号)
これは、一時的に別の用途で土地を利用する場合、その一時使用目的が終わった
後に、農地に復元できないほどひどい使われ方が予想される場合に適用されま
す。
例えば、工事のための仮設の資材置場や通路として利用して、有害物質の仮置場
や大型工事用車両が頻繁に通行することで、耕作できる状態に戻すことが困難に
なる場合などは許可されない場合があります。
☆農地転用許可申請手続き
(1)許可申請者
①4条許可申請者
4条許可申請者は、自分の土地を転用するのですから当然土地所有者だけとなります。
これは名義のことであり、実際に申請する人という意味では、申請者が窓口に来て申請する場合もありますが、大部分が不動産屋や行政書士などの代理人です。委任状があれば何の問題もありません。
②5条許可申請者
5条許可申請者は、原則として譲渡人と譲受人の連署によります。
しかし、以下の場合は譲受人が単独で申請できます。これは名義のことであり、実際に申請する人という意味では、譲受人が窓口に来て申請する場合もありますが、大部分が不動産屋や行政書士などの代理人です。これも委任状があれば何の問題もありません。
・競売・公売の場合(農地法施行規則第2条第1項第1号)。
・判決・審判の確定、調停が成立した場合(農地法施行規則第2条第1項第2号)。